夏、終わりました・・・

すっかり初秋を通り越して、深秋になってしまいましたね。。。

9月24日、久しぶりに初台オペラシティへ行ってきました。
コンサートシリーズ「歌物語り」と題された演奏会。

スペインからギタリストを招き、
J.S.バッハを軸に、出演者の母国スペイン、ベネズエラ、日本の音楽と言葉。
奏者はギター、ソプラノ歌手、チェンバロ、フルート、11弦ギター、朗読と、
とても濃い内容のプログラムです。
フルートは、遠藤尚子さん
今回は、サクライのコムプライト製フルートでの演奏です。

J.S.バッハのアヴェ・マリアから始まり、
カタルーニャ民謡の鳥の歌と聖母の御子が最後の曲でした。

後半の朗読で語られた、パブロ・カザルスの有名な言葉が胸に響きます。
1971年10月24日、ニューヨーク国連本部での演説
「私の生まれ故郷カタロニアの鳥は、ピース、ピース、ピース(平和)と鳴くのです」」
その後に演奏された「鳥の歌」は言葉に表せません。。。
核実験禁止運動にも参加していたカザルスが、今の日本を見てどう想うかなあ、、、

スペインから偉大な「芸術家」が多く輩出されていますが、なぜなのでしょう。
音楽家では、カザルス、イエペス。
画家では、ピカソ、ダリ、ミロ。
建築では、ガウディ。
作家では、ロルカ。
フラメンコでは、アントニオ・ガデス。
みんな後世に多大な影響を与えている人ばかりです。
やっぱり、ラテンの風土が良いのでしょうか。

演奏会の方は、2時間あっという間でした。

フルートの曲は、
・J.S.バッハのソナタ ロ短調 BWV1030
・初恋 (石川啄木/越谷達之助)
・からたちの花(北原白秋/山田耕筰)

遠藤さんの奏でる音色は、優しく温かいです。
すべてを受け入れてくれるような大きさを感じます。

良い音楽に触れ、また一つ刺激をいただきました。

桜井秀峰

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ニューヨーク・ニューヨーク

毎年、この時期に里帰りする80年代制作のSP総銀製。
もちろん親父幸一郎の全責任制作。
縁あって今はアメリカのニューヨークで可愛がっていただいています。

奏者の御歳は15歳。
11歳で中古のサクライフルートを手に入れました。
購入後すぐに工房に連絡がありましたので、
調整とフルートの詳細をお報せしました。

中古である事の不安は一切なく、
30年の時を経て、新しい奏者の元で新しい旅を始めています。
昨年はこの楽器で学校の試験を受け、見事合格!
若い人の大切なスタートを影ながらサポート出来て嬉しいです。

今年は、全タンポ交換のオーバーホール計画。
30年経っているものの、メカの支障は全くありません。
毎年の状態を把握しているので、スムーズに作業は終了しました。

一度奏者の元から離れた楽器であっても、
次に出逢った奏者から信頼と愛情をいただけるような楽器を制作したいです。

次回の里帰りも来年でしょうが、
楽器に優しい扱いをしていただいているので、心配はございません。
親父の作品をより良い状態で生かし続けていただいています。
本当にありがとうございます。

次のオーディションも頑張ってください!!

桜井秀峰

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世界のマルキンさん

8月最後の日曜日は、大磯海水浴場最終日。
天気は夏の日差しが残っていたのですが、
台風の影響で波が高く遊泳禁止・・・。
フィンを付けたボディーボーダーはOK。

そんな日に、60年振りに大磯へ来られた方がいました。
私の心の師匠でもある建築家・丸山欣也さん(マルキンさん)
Team Zoo アトリエ・モビル 主宰
かれこれ10年近く楽しいお付き合いをさせていただいています。

建築家とフルート制作者のなんとも不思議な繋がりなのですが、
私がずっと見てみたいなあ、と思っていた建築を設計した人でもありました。
それは、沖縄県名護市の市庁舎。

設計は、象設計集団とアトリエ・モビル。

縁あって丸山さんと知り合う事になってからの私は、
非常に濃い人生を歩む事になりました。
建築を教わったわけではありませんが、
「生き抜く力」というか、なんというか、
とにかく一緒にいると最高に刺激的です。
私が「竹で楽器を作るワークショップ」をするようになったのも、
丸山さんが最初に企画していただいたからです。
私たち家族にとって、本当にかけがえのない恩人です。

丸山さんに描いていただいた結婚式のウェルカムボード。

そんな丸山さん、今回の大磯来訪の目的は、
教え子が大磯のご自宅を設計建築したとの事で、
師匠の内覧会&教え子さん主催の大磯海岸でBBQ。

「丸山さんの教え子が大磯に!?」
そんな驚きの事実を知らなかった私は、さらにビックリ。
なんとその教え子さんのご自宅は、超近所でした!
それこそ歩いて5分のいつも通る道沿い。
それも、施工時から「すごい時間かけて丁寧に建ててるなあ。」と感心していたお家でした。
スゴイ偶然です。

教え子さんのご自宅に伺う前に、我が家へご案内。
アトリエでフルートを作る工程を説明したり、
丸山さんの若い頃の話を聞いたりしていると、
「今日は泳げないのかなあ」と、丸山さん。
60年振りに大磯での海水浴を楽しみにしていた模様。
さすがに台風でシケてますからねえ、、、無理です。。。

内覧の準備も出来たようで、念願のお家訪問。
国産の無垢木をふんだんに用いた、木の香りが充満するお家。
細かい造作にも丁寧な心遣い。
「この家、良いわ~~。」
初めて来たのに居心地が良い~。
一緒に来た近所の子ども達も、あっちだこっちだとはしゃいでました。
何でも、使った木材の主な産地は埼玉のときがわ町産。
あらま。これまた私の実家埼玉県嵐山町のお隣。
埼玉から大磯へやってきた木材たちは大切に大事に使われてました。

BBQの準備が出来たとの連絡を受け、
一同海岸へ移動。私たちもノコノコ。ありがとうございます~

教え子さんのご主人と、そのお友達もいらしてて、
ワイワイ、呑め呑め、食え食え、ガヤガヤと、
夏の終わりを惜しむかのように楽しみました。
そんな時、おもむろに立ちあがる丸山さん。
荒れ狂った海を眺め、そして、海パン一丁に。

一同「え~~!!無理ですよ~!!」

言い出したら行くところまで行くのが丸山さん。
波打ち際で足だけチャプチャプで勘弁してもらおうかと遊泳区域に案内すると、
水中メガネをセット!!
多くの人が足だけチャプチャプしている中をかき分け、
さあ行くぞ!って時にライフセーバーに止められました。

「足ヒレない人は泳いではダメ!」

がっくり肩を落とす丸山さん、、、
「この3日くらい泳いでないんだよ・・・」
わかりました、何とかしましょう。
「プールにご案内します」
ここ大磯は海水浴場がありながら、
海から歩いて行けるところに町営プールがあります。
これがまた、ローカルな雰囲気でイイんです。
25mプールと、ひょうたん型子ども用プール。だけです。

夏休み最後の日曜日ともあって、結構な混雑っぷり。
ちょっと心配でしたが、丸山さんは意気揚々と入っていきました。
それから、小一時間。
満足の表情でBBQに戻ってきました。

どこに行っても丸山さんは自分のペースを大事にしていると感じます。
建築を設計している時もそうなんだろうなあ、と思いますし、
立ちあがった建築を見ても、同じように感じます。
それは、「完成させない=終わらせない」という意味もある気がしました。

完成は自分で決めるものではなく、
他者が決めるものだと。
自分で完成したと思ってしまったら、
その作品はそこで止まってしまう。
作品を生き続けさせる事も私の仕事です。

生き続ける建築は世界に数多くあります。
そして、生き続ける楽器もたくさんあります。
私の作品を永く生き続けさせる為に、まずは自分を完成させない事。

その為には何をするべきか、、、
夏の最後にそんな事を考えてしまいました。

桜井秀峰

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サイトウキネンフェスティバル松本。

行ってきました、サイトウキネンフェスティバル松本
映像や録音では聴いていますが、初めての生鑑賞です。

一気に夏が終わったの?と感じさせられた21日。
寒気の中、片道4時間ちょっとのロングドライブ。
霧でまったく見えなかった富士山の裾野をひた走り、
朝のドラマ「おひさま」の舞台でもある松本市へ到着。

鑑賞する演目は、
ベーラ・バルトーク作曲
○バレエ「中国の不思議な役人」指揮:沼尻竜典
○オペラ「青ひげ公の城」指揮:小澤征爾

出演:
青ひげ公:マティアス・ゲルネ(青ひげ公の城)
ユディット:エレーナ・ツィトコーワ(青ひげ公の城)
Noism1
井関佐和子、宮河愛一郎、藤井泉、櫛田祥光、中川賢、青木枝美、
真下恵、藤澤拓也、計見葵、宮原由紀夫、亀井彩加、角田レオナルド仁
Noism2

演奏はもちろん、
サイトウキネンオーケストラ(SKO)。
そして!
演出/振付は、
金森穣!!!
空間:田根剛、 リナ・ゴットメ、ダン・ドレル(DGT)
衣裳:中嶋佑一(artburt)
照明:伊藤雅一(株式会社 流)/ 金森穣

今回で20回目となるサイトウキネンフェスティバル松本は、
病気療養されていた総監督小澤征爾さんの完全復活という事もあり、
観客のみならず、全世界が注目しています。

私たち家族も特別な想いを抱いて松本へ赴きました。
私の妻は結婚する前までダンスを生業としていたのですが、
今回出演するNoismには2004年の創立メンバーとして参加しており、
演出の金森穣さんとマエストロ小澤征爾さんの競演を見ないわけにはいきません。

そして、私のもう一つの楽しみ。
SKOのフルート奏者、セバスチャン・ジャコー氏(Sebastian Jacot)。
知った仲ではありませんが、
私たちの木管製フルートを吹く奏者から、
「木管製を吹く若い奏者がいるよ!」と教えていただき、
youtubeを見てみると、びっくりしました。
とにかくスケールの大きな演奏に、衝撃を受けました。
私たちのフルートではありませんが、
木管製フルートを中心に演奏しているスタイルのようで、
私たちにとって「木管製はここまでの表現力がある!」って事を具現化している奏者です。
録画でしか彼の音を聴いていなかったので、
ぜひ彼の生音を聴いてみたいという想いもあっての鑑賞です。

さらに「まつもと市民芸術館」には、
私が演劇活動を始めた頃から大変お世話になっていた、
シアターガイドの元編集長今井浩一さんがいらっしゃいます。
今はまつもと市民芸術館の営業宣伝リーダーとして、
まつもと発の世界的作品をより多く創り出す為に奔走されています。

開演15分前に到着すると、
今日この日を待ちわびた多くの人がどっさり。
受付付近で今井さんと久しぶりの再会。
初日が開くまでは寝ずの激務だったはず。。。
それでも、変わらない笑顔で迎えていただきました。

子どもを託児サービスで預かってもらい、
結婚して以来、初めて夫婦2人での鑑賞。

暗転。

いきなりのマエストロ登場にざわつく会場。
東日本大震災を想い、マエストロ指揮でG線上のアリアを捧げ、
黙祷。

開演。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。

あっと言う間の2時間。。。

私の感想など必要のない、本当に素晴らしい作品。

初めて金森さんの作品を鑑賞させていただきましたが、
これはもう、なんというか、「世界」と戦っています。
細部から世界、そしてまた細部。
この振れ幅の広さは圧倒的です。
小澤征爾総監督との「対峙」にも、真摯に向き合っていて、
最後の最後まで、ちゃんと地を掴んで足で立っていました。
なんだかすいません、わかりずらい喩えばかりで。。。

今回は舞台とオーケストラと両方に目を向けて集中するという、
私の中で初めての経験でした。
そして、ジャコー氏の演奏は、期待どおりでした。
音色は際立っていながら、木管製だからか嫌味ではなく、
他の木管セクションとも溶け合っていました。
そして、ソロになるとすべてを受けとめる集中力と存在感。
久しぶりにゾクっとしました。
日本ではあまり知られていないと思いますが、
今後がとても楽しみな奏者の1人に間違いはないでしょう。

SKO全体もバレエとオペラの伴奏という意識ではなく、
バレエの動きを感じ、時に引っ張ったり寄り添ったり。
なかでもダンサー井関さんとクラリネット奏者ハジンズさんのソロ共演は絶品。
お互い見えてないはずなのに、見えてるのか!くらい阿吽の呼吸。

そして、マエストロ小澤征爾さん。
会場全部の視線から何から全てを集めても揺ぎ無い存在感。

これはこれは、本当にもう、どうしましょう、
ってくらいスゴイ公演でした。

終演後、今井さんとしばし歓談。
聞けばストラヴィンスキーの「兵士の物語」も素晴らしいと。
芸術監督串田和美さんと音楽監督小澤征爾さんの初競演。
うぐ・・・、観たい。。。
なんと、同じホールでやるので、毎日仕込みバラシをするのだとか。
やることがケタ違いだ。。。

妻が金森さんと井関さんにご挨拶に行こう、
というか内緒で来ているのでビックリさせに行こうと楽屋を訪ねると、
「ええ!!なんでいるの!?」
サプライズ好きな妻の期待通り、びっくりしてくれた金森さんと井関さん。
妻の中では特別なお二人なので、
今日観に来れた事を本当に楽しんでいるようでした。

オーケストラの皆さんは早々に帰ったようで、
楽屋は空っぽ。
ジャコー氏との対面は、また次回の楽しみとなりました。

雨も弱まり、元来た道をとんぼ帰り。
松本市には3時間滞在しただけですが、
とてつもない濃密な時間を体験しました。

サイトウキネンフェスティバル松本
ぜひ一度ご体験を。

今井さん、どうもありがとうございました。

桜井秀峰

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未来を想いながら

先人の仕事を目の当たりにした時、
いかに自分がまだまだ甘ちゃんで足元にも及ばないかを痛感します。

先日お越しいただいた奏者が持って来られた、1920年頃に制作されたフルート。
その名はヘインズフルート。大巨匠J.P.ランパルが生涯使い続けた事でも有名です。
100年近く経っているので各所に摩耗などはあるものの、大きな支障ではありませんでした。
元々の作りがしっかりしていて、楽器の基本設計(形・音色・思想)も確固としています。
今のようなコンピュータ制御の機械などあろうはずもなく、ひたすら手を動かし続け、
さまざまなアイディアを生み出しながら、制作されていたのでしょう。
まさに命がけでフルートを制作していた時代。
これは直せる。そう想った瞬間、

「私はまだ歌いたいんだ!」

そんな言葉を聴いた気がしました。
この楽器を吹いていた奏者が楽器に託した情熱なのでしょうか。
はたまた作り手の命がけな想いなのでしょうか。

摩耗したところの細かい部品は同じ材質、同じデザインで作り直します。
細かいところを直しながら、この楽器の本質を探る事が重要です。

自分勝手に弄る事ではなく、この楽器の本質を見極め、
修理・修復の方向性を決めていきます。
それには、楽器に”本質”が備わっている事が大前提です。
魂の入った楽器であれば、いくら摩耗していても直せます。
というか、直したいという気持ちにさせられます。
それも私たちにとって大切な仕事です。

私たちの制作した楽器たちも、いつかは摩耗していきます。
その時に未来の職人たちが「直したい!」という気持ちになってくれるような、
そんな楽器を作りたいと切に想っています。

桜井秀峰

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