今 考えている事

改めてフルートという楽器を考えてみたいと想います。フルートがオーケストラの中で、どのようなポジションなのか。フルートが本来あるべき姿、音、理想を追い求めて。オーケストラで例えるならば、弦楽器を波とするとフルートは見え隠れする小舟。弦楽器が樹海ならば、フルートは木々の触れる音から時折聴こえる鳥の歌声。

 

フルートは美しくなければいけないと私たちは想います。機能美を備えたフルートを作り続ける為に、私たちはまだまだ学ぶ事があります。先人たちの手によって作られたフルートには、追求された美しさはもちろんの事、想いや魂が宿っています。それらをしっかりと感じ制作に生かさなくてはいけないと想います。

 

音楽を始めたい人にこそ良いフルートを使ってもらいたい。一日のうちで数分しか吹く時間がない人にこそ良いフルートで吹いてもらいたい。フルートを吹いて一日を終え、楽しい明日を迎える気持ちになるようなフルート。演奏するあなたの良き相棒となれるような、あなたと一緒に物語を紡いでいけるような、そんなフルートでありたいと想っています。

 

究極はフルートの存在を忘れ、音楽を奏でる事にのみ集中できるような楽器を制作する事。その為には、様々な要素が最高の状態で奏者からの信頼を真摯に受け止められるフルートでなくてはならないと考えています。

 

私たちは先人の遺した「手技・手仕事」を次世代に伝える事も重要だと考えています。機械加工に頼らず、自らの手から生み出された楽器は製品ではなく作品です。先人の仕事に敬意を表し、魂を感じることが私たちには必要です。

 

現在木管フルートに使用される木材たちを巡って、私たちは窮地に立たされています。良い木材が手に入りにくくなっている現状があり、この状況は今後数十年続くでしょう。私たちは、木材に代わる素材の研究、開発をフルート制作と同じくらい大事だと考えています。セラミック、人工大理石、積層強化木などでフルートを制作してきました。これらの材料メーカーや加工業者は楽器業界とは異なる業種です。業界の枠を超えて実現したコラボレーションです。私たちはこれからも未だ見ぬ新素材を求めて進んでいきます。