Category Archives: 日々つれづれ

ニューヨーク・ニューヨーク

毎年、この時期に里帰りする80年代制作のSP総銀製。 もちろん親父幸一郎の全責任制作。 縁あって今はアメリカのニューヨークで可愛がっていただいています。 奏者の御歳は15歳。 11歳で中古のサクライフルートを手に入れました。 購入後すぐに工房に連絡がありましたので、 調整とフルートの詳細をお報せしました。 中古である事の不安は一切なく、 30年の時を経て、新しい奏者の元で新しい旅を始めています。 昨年はこの楽器で学校の試験を受け、見事合格! 若い人の大切なスタートを影ながらサポート出来て嬉しいです。 今年は、全タンポ交換のオーバーホール計画。 30年経っているものの、メカの支障は全くありません。 毎年の状態を把握しているので、スムーズに作業は終了しました。 一度奏者の元から離れた楽器であっても、 次に出逢った奏者から信頼と愛情をいただけるような楽器を制作したいです。 次回の里帰りも来年でしょうが、 楽器に優しい扱いをしていただいているので、心配はございません。 親父の作品をより良い状態で生かし続けていただいています。 本当にありがとうございます。 次のオーディションも頑張ってください!! 桜井秀峰

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未来を想いながら

先人の仕事を目の当たりにした時、 いかに自分がまだまだ甘ちゃんで足元にも及ばないかを痛感します。 先日お越しいただいた奏者が持って来られた、1920年頃に制作されたフルート。 その名はヘインズフルート。大巨匠J.P.ランパルが生涯使い続けた事でも有名です。 100年近く経っているので各所に摩耗などはあるものの、大きな支障ではありませんでした。 元々の作りがしっかりしていて、楽器の基本設計(形・音色・思想)も確固としています。 今のようなコンピュータ制御の機械などあろうはずもなく、ひたすら手を動かし続け、 さまざまなアイディアを生み出しながら、制作されていたのでしょう。 まさに命がけでフルートを制作していた時代。 これは直せる。そう想った瞬間、 「私はまだ歌いたいんだ!」 そんな言葉を聴いた気がしました。 この楽器を吹いていた奏者が楽器に託した情熱なのでしょうか。 はたまた作り手の命がけな想いなのでしょうか。 摩耗したところの細かい部品は同じ材質、同じデザインで作り直します。 細かいところを直しながら、この楽器の本質を探る事が重要です。 自分勝手に弄る事ではなく、この楽器の本質を見極め、 修理・修復の方向性を決めていきます。 それには、楽器に”本質”が備わっている事が大前提です。 魂の入った楽器であれば、いくら摩耗していても直せます。 というか、直したいという気持ちにさせられます。 それも私たちにとって大切な仕事です。 私たちの制作した楽器たちも、いつかは摩耗していきます。 その時に未来の職人たちが「直したい!」という気持ちになってくれるような、 そんな楽器を作りたいと切に想っています。 桜井秀峰

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一音一心

日差しは無いけど、やっぱり暑い埼玉の工房・・・。 今年は省エネエアコンを新調したので、安心して奏者の皆さまをお迎え出来ています。 先日いらしていただいた奏者のお話。 愛用のAU-10製フルートの調整をしている間、しばしご歓談。 この1年に起きた出来事や感じた事など、たくさんお話しました。 ここ最近は体調を崩されていたようで、 フルートを吹いていられる今をより大切にかみしめているように感じました。 「木管、吹いてみます?」 「はい。ぜひ。」 前回いらした時にも木管を吹いて頂いてまして、 「また吹いてみたい」と想いを馳せていたようです。 それこそ、 ひとつひとつ、少しずつ音を確かめるように吹いていました。 木管を愛用していただいている奏者の中には、 木管によって人生を大きく変えた方々がいます。 私たちも木管を制作し始めて大きく変わりました。 音楽の中でのフルート。 貴重な木材で制作するという心構え。 生きていた木を殺さずに「活かす」為に必要な知識と経験。 今も日々探求と試行錯誤の連続です。 調整も無事に終わり改めて自分の楽器を吹くと、 流れるように自然と音が出ていました。 苦楽を共にした相棒は奏者の心もわかっているのでしょう。 木管を通して何かのきっかけを感じていただけようです。 愛用のAU-10とさらに表現の幅を広げられることと想います。 桜井秀峰

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初めて地元と想えて

台風6号が襲来する前の17日、 雲ひとつない晴天の中で大磯町「高来神社夏季例大祭」が無事行われました。 朝5時から始まって夜7時まで、全力で担ぎ、掛け声を出し続けました。 今日この日の為に、6月から1日も休みを取って無い人、 土日が忙しい仕事なのに無理やり休んだ人、 次の日から東北へ支援に行く人、 来年にはアフリカに行ってしまう人、 台風来ているのにゴルフ場に行く予定の人、 いつもと変わらない次の日が来ちゃう人、などなど。 境遇ははそれぞれですが、この1日の為に集まった大切な仲間たちです。 上は80歳過ぎた重鎮に、下は2歳の我が息子。 年齢も性別も仕事も役職も一切関係なくなる、特別な日です。 普段は温厚なお父さんが鬼の形相で「ウリャー!!」 若造が大先輩の重鎮に向かって「チカラ入れろ!コラー!」 元々気性の荒い姉さん達が更に「※♯&%$!!!!!」(自主規制) 普段はアフタヌーンティーを嗜んでいる私たち家族(嘘)も、 この日ばかりは何を呑んで何を出したか、、、わかりません。 あ、いえ。「すべてを出し切った」という事だけ、わかります。 すべてを出し切ってしまえば、後はからっぽ。 新しい気持ちで何でも新鮮に受け入れる事が出来る気がします。 今ここに自分がいて、家族がいる事に心から感謝しています。 仲間がいて、先輩がいて、安心してここにいられる気持ちです。 隣のおじいちゃんによると、昔は家族総出で祭りに参加していたそうで、 「家にいる奴なんていねえよ。祭の為にすべてがあったんだよ。」 それくらい大切なお祭りだったようです。 自分がこの土地の人間だと周りに認識させる為の祭りだろうし、 自分自身も仲間だと感じられる高揚感が欲しい為の祭り。 皆が同じ方向を見ていた時代であれば当然必要な事として、 祭りは存在していたのでしょう。 今では人それぞれに事情があり、参加者も減ってしまい、 昔ほどの活気は無くなったのかもしれません。 そして、祭りが担っていた役割も意味も大きく変わってきているかもしれません。 おっと。 何だか、難しいお話になりそうだ。すいません。祭りボケです。 桜井ファミリー。 とにかく、こんな私たち家族を受け入れてくれる地元の皆さんに本当に感謝です。 今年は甚句も謳わせていただいちゃったし。せ~~♪ 他の町内なら考えられない事だそうです。 今年から若手(といっても40歳代)が「山王会」の中心となり、 昔からの伝統を重んじながら、新しい活気を生み出すような体制になりました。 … Continue reading

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制作する親子と演奏する親子

先日いらしていただいたご家族のお話。 ご主人がフルート吹きで、幸一郎作のAU-10製と本黒檀製を愛用していただいています。 かれこれ、20年来のお付き合い。 今回は、息子さん用の管体銀製ストレートカバードを制作させていただきました。 親子2代のサクライフルート吹きとなりました。 近い将来、親子でデュエットをする日を楽しみにしているようです。 私たちもその日を心待ちにしております。 桜井秀峰

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