のストーリー

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主人公

使用楽器:AU-10

フルート暦:29年

主な演奏場所:フルートアンサンブル、フリーで演奏活動

大学生だった頃、お世話になっていた師匠がサクライフルートを使っていましたので、いつもサクライフルートの音色に触れていました。同期や知り合いもサクライを吹くようになり「音が魅力的。自分の出したい音色をサクライフルートなら手伝ってくれるのではないか。」と思いサクライを選びました。

工房にお邪魔して実際に作っている現場を見て、感動しました。初めてみる「職人さん」。 次のフルートは永く付き合える楽器にしたいと思っていました。銀製の音色がとにかく好きだったのですが、その頃は金製の華やかさにも憧れていて、でも金製を吹く気にはなれず(自信もなかったのですが…)、そんな事を考えていたところ幸一郎さんから「金が10%配合された新しい合金があるよ」聞き、「これだ!自分のニーズにマッチしている!」と感じAU-10製で制作をお願いしました。 「AU-10が完成した」と連絡があり、工房へ再度訪問しました。完成までどのくらい待ったかは憶えていませんが、すぐではなかったと思います。ただ、工房でどのように仕事をされているのか見ていましたので、待つのは当然くらいに思っていました。 私のAU-10を吹いてみると、今までの楽器と吹き方が違うようで違和感がありましたが、「これからAU-10を育てていく喜び」の方が強く戸惑いはすぐに消えました。

どちらかというとすぐ鳴る楽器は好きではないので、「のびしろ」を感じさせるサクライにして正解でした。 幸一郎さんからは「自分の楽器なんだから、人にいじらせちゃいけないよ。サクライが作ったんだから、最後までサクライが面倒をみるから」と言われました。実際、大学を卒業後にドイツへ留学していたのですが、調整を誰に頼めば良いか桜井さんに国際電話した事があります。 AU-10にしてから、今まではフルートを「吹く」ことに精一杯だったのですが、「鳴らす。歌わせる。」感覚に変わっていきました。周りからは「音が変わったね~」と。 フルートは音楽を奏でるツール(道具)だと私は考えています。ベストな音楽を奏でるために、フルートをベストな状態に調整してもらう事はとても大切です。調整をしてもらうと、整体をしてもらったように血行、リンパの流れが良くなってコリみたいなのが取れる感があります。フルートの状態も良くなれば、心身も楽になり、良い音楽に繋がると思います。

私にとって音楽は「嬉しい時も」「哀しい時も」いつも一緒にいる感じです。これからも音楽を通じて国境を越えて音楽を愛する気持ちを共有していきたいと思っています。

 

「AU-10の申し子」

桜井秀峰

AU-10を発表した1980年代は、まさにゴールド隆盛期。金への憧れを抱きつつもあえて総銀製を選択される方が多くいました。そんな中、総銀製の音色を持ちつつ、金のスパイスを効かせたのがAU-10です。ちなみに、AUというモデル名は幸一郎が化学を専攻していた事もあり金の元素記号【Au】から付けています。 この方のAU-10が15年以上経過した頃、数年ぶりに里帰りしたAU-10は完成直後とはまるで違う成長を遂げていました。AU-10は、私たちも熟知している総銀製の経年変化(エージング)による管体の響きに金の重さからくる音の厚みが加わっていました。毎日音楽に触れる生活をされている現在、様々な表現の幅を求められていらっしゃるようです。この方にとって、AU-10だったからより「自分らしい表現」が出来たのではないかと思っております。

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